WEBショップへの道 焼き菓子
ためしに焼いてもらったケーキを買って帰った。
ラムの香り立つ「ケーク・オ・フリュィ」
トッピングにナッツを散らしてある。
どことなくレトロなケーキ。
使ってあるラムは、「ネグリタ」
黒い女の子、と言う意味である。
マルチニック諸島からフランスのボルドーに送って、さらにそこで熟成させた、製菓用の香り高いラムである。
箱を開けるたび、ラムのいい香りがぷんぷんにおってくる。
「こんなにラムを使ってもいいですかねえ?」
アジュールの彼は言う。
「私は重たいのが好きだから」
そうはいったものの、においだけ嗅ぐのと食べてみるのとでは大違い。
夫は喜んでいたが、お酒に弱い私は一切れ食べて酔ってしまった。
でも美味しい。
口の中でほろほろっと崩れる感じが、いい。
気になったのは「焼き色」。
「もうちょっと焼き上がりを軽くできないかしら?」
「このくらい焼かないと!焼き色はしっかりつける。」
彼は確固として譲りそうもない。
フランスのお菓子屋さんみたい。
そこが彼のいいところ。
包装についても、きれいにラッピングしようと提案する私に、彼はそんなところにお金をかけないほうが・・・とラッピングに興味ない。
近所のお客さんは、彼のお菓子を普段着のおやつとして買いにくる。
特別なお菓子じゃなくて、毎日食べるもの。
だから、余分なお金を払ってまでも欲しい、というネットのお客様の気持ちは分からないかもしれない。
安くて量があったっほうがいい、という彼の考えは、私にもわかる。
家に帰ってケーキの写真を撮りながら考える。
私はこのケーキを売ることができるのだろうか。
対面販売とは違って、ネット販売は、
たった一度でも、ちょっとしたことでも気に入らないことがあると、
そのお店の商品すべての信用も失いかねない。
失敗は許されない、と思うと、急に怖くなった。
自分の気に入っているお店のケーキを、人様にも愛されるようにするには、どうしたらいいだろう。
ケーキは保留のままだが、スリランカティーのオープニングセットを作ってみた。
ウヴァ、ディンブラ、ヌワラエリア、の3つと、ティーキャディースプーン。
ジュートで作った袋に入れてみる。
素朴で、木箱の雰囲気に合うと思う。
限定20セット。
ちょっと無理してお安くしたので、この機会に飲み比べてくれたら、と思う。
とてもゆっくりですがひとつずつ準備しています。
菓子工房AZUR アジュール
先週から約束をしていたのだ。
パティシエの印象は「板前」
フランス菓子のパティシエには見えない(失礼!)
でも彼はとても実直で、素直で計算高いところなどみじんもなく、好感のもてる人柄だ。
お菓子を焼いてもらえませんか?
と最初に頼んだときには、その人柄までは私は考えなかった。
ただ、ここのお菓子が、気取っていなくて、素朴で、でも重たくて食べ応えがあるということに魅力を感じていただけだった。
でもそれはそのまま彼の人柄なのだと気付いた。
その人が作る作品は、そのひとそのまま・・・
当たり前なんだけど、それに気付かないでいたなんて。
ご縁あって、紅茶を扱えて、そのうえお菓子を焼いてくれるところにも出会えた。
「AZUR」
紺碧、というフランス語だ。
青くどこまでも続くメディテラネの海を思い出した。
それは、私が初めて訪れたフランス、モンプリエから車ですぐの名前も知らない海の色。
私が育った博多の海、
頂いたご縁を大切に、この「AZUR」の彼が焼いてくれたお菓子を、長くお客様に愛されるように、販売しなくてはならない。
それは彼と一緒で、実直で、素朴、でもずっしりと中身の詰まった愛すべき人たちと出会いの連続かもしれない。